DIARY

2008.10.01(水) 

「こんにちはあ!」その男は山じゅうに響く大きな声で僕に呼びかけた
のだ。はち切れんばかりの楽しさが心に満ち溢れていることが分かる微
笑みで、逞しく陽に焼けたその顔をしわくちゃにさせていた。男は霊で
はなく、こんな山の奥の細道をたった一人自転車でツーリングしに来て
いる強者だった。しかもその自転車は、最近よく街で見かける、カラフ
ルなぴちぴちタイツを全身にまとい、ラグビーボールのような形のヘル
メットをかぶった人たちが、車に乗っている人たちが迷惑しているにも
かかわらず、颯爽と246を走りぬける、軽くてすばしこそうなあの自
転車ではなく、もうちょっとふつうっぽい街の自転車屋さんに売ってそ
うな庶民的な自転車なのだ。そんな自転車でこんな山の奥の細道まで来
て熊に出会ったらいったいどうするつもりなのか。彼の機嫌の良さは絶
頂にあった。山じゅうに響き渡る声で挨拶してくれた。それに対して僕
は無言で手を挙げ挨拶を返して追い越した。気持ちに余裕がなかった。
すげえ人もいるもんだ。今思えばなぜあのときバイクを降りて少しでも
立ち話をしなかったのかと悔やまれる。きっと面白い話が聞けただろう。
しばらくすると道が広くきれいになり、なんとなくクリスタルなライ
ンになる。景色が開けたところに出ると、崖に沿ったガードレールの向
こう、草木が生い茂る広く深い谷を挟んで、頂上付近に幾つもの巨石が
露出する荒々しい山岳地帯が眺められた。バイクを止めしばし観賞する
も熊への恐怖からすぐに頭をくるくると回して安全を確認し走り出す。
野猿谷林道との分岐点を超えても道の状態は相変わらず良くならないし
栗の毬はたくさん落っこちているし、そろそろいい加減緊張する道は終
わって欲しいと思い始めた、その時・・・・・(まあだ続く)


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