DIARY

恋のバッドチューニング

Tom WaitsのOrphans: Brawlers, Bawlers & Bastards [Disc 3]を聴いている。
3枚組の3枚目は夜ぼんやり聴くのにいいな。
歌い方も個性があるけれど、音作りも凄く凝っている。
音質の高域の抜けがかなり悪い。
ギターにしろオルガンにしろチューニングが必ずといっていいほど狂っている。
わざと狂わせているのだが、
その狂わせ方が絶妙で気持ちがいい。
いや本当はただチューニングがいいかげんなだけなのかもしれない。
彼の音楽性に、チューニングがぴったり合った楽器は必要ないね。

実際のレコーディングの現場では、
なかなかTom Waitsくらいまでチューニングを思いっきり狂わせられない。
普通、ポップスとかロックのレコーディング現場でチューニングが狂っていると、
プロデューサみたいな人から必ずダメ出しがくる。
そうでなくとも自分で、これは駄目なんじゃないかと思って、
直してしまう。

すべての楽器のチューニングがぴったり合い過ぎていると、
歌のピッチがほんのちょっとでもズレるとすごく目立つ。
1970年代までの音楽はギターでチューニングというとおそらく、
音叉とかスタジオに置いてあるピアノを鳴らして人の耳で合わせていたはずだ。
1980年頃からチューニングマシンという機械が現れて、
ギターでもなんでもみんなチューナーでぴったり合わせるようになった。
1980年以降のギタリストは足下にエフェクターを何個も置いて、
しかるべき箇所にしかるべき音色を正しく鳴らすようになった。
それ以前のギタリストはディストーションサウンドなら、
アンプのつまみをいじったりギターのボリュームを微妙にいじったりして、
演奏しながら調整することが多かった。
去年The Whoのライブに行った時、
ピートタウンゼントは一曲の中でしつこいくらい何回もアンプのボリュームをいじっていた。

1970年代までの音楽のそういったルーズさが好きだ。
音色も、チューニングもちょっとずれていて、
くすんだような、滲んだような楽器の音色が。
そういった楽器でアンサンブルを組んだ音楽のほうが、
歌と相性がいいような気が、ぼくはするんだけどな。






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