DIARY

ミュージシャンの本領

先日亡くなったJapanの素晴らしいベーシスト、ミック・カーンは、
譜面がまったく読めなかったばかりか、
コードネームさえ知らなかったそうである。
YMOと違ってJapanがロック的に聞こえるのは、
そういうところもあったのだろう。
数多くの名盤に参加してきたドラマー、
バーナード・パーディーも譜面が読めないと聞いた。
チャック・ベリーもたぶん読めないんじゃないかな。

譜面が読めないミュージシャンはけっこう多い。
ただし、ぼくが知ってる譜面が読めないミュージシャンのほとんどが、
一、二回曲をプレイバックさせるとすぐに曲全体を憶えられるという人たちだった。
彼らは譜面が読めなくても仕事ができる人たちだった。

譜面が読めない、とあるミュージシャンのプレイを録音しているときに、
パンチインが出来ないという状況が発生した。
間違えたところの何小節か前からプレイバックするのだが、
間違えたところから「何小節前」という考え方が彼にはなかった。
だから間違えたら曲の頭からやり直さなければならなかった。
だがこれはある意味でとても真っ当な録音方法かもしれなかった。
だって人が音楽を聴く時、ふつうは、
録音された曲を細かい部分に分断して部分的に聴くことはほとんどなく、
頭から最後まで切れ目なく流して聴く。
だから演奏も本来は最初から最後まで切れ目なく流して演奏するのが、
曲として自然なのかもしれないのだ。

ところで、ぼくもピチカート5に入って構成譜の書き方を教えてもらうまでは、
曲を一、二回聴けばだいたい曲全体を憶えることができた。
構成譜の存在を知ってからできなくなっちゃった。
デビュー前のオリジナル・ラヴは譜面を使ったことがなかった。
譜面の書き方も知らないのに、
いろんなテンションコードを知っている、
しかし使い方がデタラメ、
というのが当時のぼくの持ち味だった。

「曲を一、二回聴いてすぐに曲全体が憶えられる」というのは、
曲をすごくたくさん作っている人たちにとっては、
そんなに難しいことではないと思う。
ミュージシャンの能力として、
もっと驚くべき能力を持っている人たちはうなるほどいた。

ちなみに今のぼくの構成譜の書き方、特にコードの書き方は大分間違ってる。
正しい書き方を森俊之君に教わったのだけど、
しばらくしたらまた元に戻っちゃった。
ベースの鹿島さん他いろんなスタジオミュージシャンが、
ぼくの間違いにずっと前から気づいてたのに、
知らんぷりしておいてくれてたらしいんだよな。

「曲を一、二回聴いてすぐに曲全体が憶えられる」ということは、
別にそんなすごいことではない。
練習すれば誰でもある程度はできるようになる。
それよりも チャーリー・ワッツのグルーヴだとか、
ジム・ケルトナーのリズムキープだとか、
いくら練習しても真似できないプレイが、
名盤といわれるたくさんのアルバムには録音されている。
音楽の本当にマジカルな部分はそっちであって、
価値はそっちのほうにある。
みんなが練習してもできない演奏が、
できるようになること、
その人ならではの感覚を持つことが、
ミュージシャンの本領なのである。






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